クォヴァディス―ネロの時代の物語 / シェンキェヴィチ [海外作品]
クォヴァディス〈上〉―ネロの時代の物語 (1954年) (岩波文庫)
- 作者: シェンキェヴィチ
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1954
- メディア: 文庫
上中下の計3冊。
副題の通り、ネロの時代の物語。
キリスト教徒がまだ得体の知れない怪しい集団だとして迫害されていた時代。
そして、ペテロやパウロの時代でもある。彼らが小説に登場するというのは、何だか新鮮というか、不思議な感じでした。
リギア(一応はローマの人質である娘)に惹かれて、キリスト教に目覚める、ローマ貴族のヴィニキウス。
ヴィニキウスとリギアの2人を見守る、ヴィニキウスの叔父のペトロニウス。2人を見守るというところからか、『二都物語』(ディケンズ)のロリー氏を連想してしまいました。
『背教者ユリアヌス』(辻邦生)の後に読んだせいか、キリスト教も初期は政治にまみれていなくて、純粋に教えそのものだったんだな・・と実感。
魚のシンボル(イクトゥス)は、『愛してローマ夜想曲』(藤本ひとみ)で知っていましたが、その由来は初めて知りました。
ギリシア語でイエス・キリスト・神の子・救世主の頭文字を合わせたものだとか。
ただ、リギアとヴィニキウスの愛の物語、そしてヴィニキウスの改宗の物語とするならば、上中2巻で既に遂げている。
でも下巻が奥深い。『クォ ヴァディス』の言葉も下巻で登場します。
ローマの火事という大事件。責任は得体の知れないキリスト教徒に押し付けた。
闘技場では、抵抗しないキリスト教徒は奇怪のようにみえるかもしれない。
その一方、血を求める民衆に、残酷さを感じずにもいられない。
キロンは自分のことしか考えていない、二枚舌の裏切り者。と思いきや・・。
ネロに追従するペトロニウスとティゲリヌスの敵対関係。
ペトロニウスの方が芸術を理解するところからか重く見られていた感もあったが、ヴィニキウスをかばうために徐々に均衡が崩れていく。
ペトロニウスの最後の晩餐が印象的。
キリスト教も認めた上で、自分はその道を行かない。ギリシア・ローマの芸術を愛し、自分の意思を貫き通す。
ヴィニキウスとリギアよりも、ペトロニウスとエウニケの方に惹かれました。
思っていた以上に、実在の人物が多いよう。(wikiによるものなので、真偽は不明だけど)
リギアの養い親のアウルスやポンポニアは創作かと思っていました。
ちなみに、私は旧版で読んだので、翻訳の漢字が旧字体という点で読むのに苦労しました。
新版はこちら。
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