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黒王妃 / 佐藤 賢一 [国内作品]


黒王妃

黒王妃

  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本


黒王妃とはカトリーヌ・ド・メディシスのこと。夫のアンリ2世が亡くなって、黒い服ばかり好んで着ていたからついた名前らしい。

独白があるのが面白い。

イタリアから持ち込んだ習慣や食文化はフランスに大きな影響をもたらしている。(他の本の情報だったかもしれないけれど)フランスではそれまで手づかみで食事をしていたのが、カトリーヌによってフォークなどの食器を使うようになり、食事作法も大きく変化した。今のフランス料理のイメージはイタリアから輸入されたものといえるのかも。

商人の娘といわれても。イタリア女は家庭を大切にする。
メアリー・スチュアートはフランス名はマリー・スチュアールになるのね。
嫁との関係。ギース公の台頭。

当時の王族は諸外国の王族と婚姻を結ぶことが多く、外交の駒とされる。カトーリーヌの子供たちもそう。イギリスのエリザベスとも縁談があったとは。

でも、終わり方がなんだか腑に落ちない。ここで終わり?という感じ。
なんとなくだけれど、佐藤賢一さんの本は女性より男性が主人公の方がいい気がする。

遊撃隊のようなものの記述があって、そういえば藤本ひとみさんの本『預言者ノストラダムス(文庫版:ノストラダムスと王妃)』にも出てきたなと思い出した。異なる作者で出てくるということは、全くの創作ではなくて何かしら根拠があるということなんでしょうね。
同じカトリーヌ・ド・メディシスを扱った作品ということで、藤本ひとみさんのと比べてしまう。タイトル通りノストラダムスの話も半分くらいあるので比較するのもなんですが、預言者ノストラダムスの方が私は好きです。
タグ:佐藤賢一
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織田信長 / 山岡荘八 [国内作品]


織田信長(1) 無門三略の巻(山岡荘八歴史文庫 10)

織田信長(1) 無門三略の巻(山岡荘八歴史文庫 10)

  • 作者: 山岡 荘八
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1987/09/08
  • メディア: 文庫


日本の歴史はあまり詳しくないので、知識を得るためにも読んでみました。
わかりやすいし、面白かったです。誰が誰の手勢だとか策士だとか、そういうつながりがなんとなく整理できたかな。
山岡荘八文庫、100冊あるらしい。ぼちぼち読んでみたいと思います。

何のイメージだったのかわかりませんが、なんとなく孤高でナルシスト的なイメージだったのがくつがえされました。子供の頃から、やんちゃというかガキ大将で、うつけ者と呼ばれていた。でも、あちこち遊び歩いていたのにはちゃんと理由あってのこと。誰よりも地勢に詳しい。
3人同時に妾をとるとかいうのにもちゃんと意図が。斉藤道三にも認められる。

小さい頃岐阜県の美濃地方に住んでいて現在実家は愛知県なのもあって、知っている地名も結構でてきます。あ~知ってる知ってる~となんだか嬉しくなります。身近に思えるというか。岐阜の名前の由来とかは初めて知りました。

濃姫が好き。知的な良妻。信長の一見不可解に思える行動も、理解してしまう。自分が子供が産めないということが可哀想。信長には阿濃とも呼ばれている。阿というのはちゃんみたいなことなのかな。

柴田勝家は権六だったりとか、前田利家は犬千代だったりとか、名前が知っているものと違うので、気がついたときに新たな発見をした気分になる。幼名だったりとか、当時の人は名前がころころ変わるみたいね。

明智光秀のことは「ハゲ」と連呼。2人はすれ違いから本能寺の変に至った感じ。
光秀は信長に認めてもらいたいけれど、警戒されていると勘違い。
信長の方は、言わなくてもわかるだろ、という感じで。
光秀の思い込みがひどく、誤った形で家来に伝わり、家来から押された形でやむなく謀反を企てる。
信長も、「ハゲのやったことなら逃げ道はない」といさぎよい。
最後は濃姫で終わったのが、濃姫ファンとしては嬉しい。
タグ:山岡荘八
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阿片戦争 / 陳 舜臣 [国内作品]


阿片戦争(上) 滄海編 (講談社文庫 ち 1-1)

阿片戦争(上) 滄海編 (講談社文庫 ち 1-1)

  • 作者: 陳 舜臣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1973/08/29
  • メディア: 文庫


全3巻。

歴史物を探していたときに、陳舜臣さんの名を見つけて読んでみようと思いました。
その中でも、初期のものからというのと、青木祐子さんの『上海恋茶館』で阿片の話題が出てきたので、この『阿片戦争』を最初に手に取った次第です。

阿片を取り締まっても、中毒者は多数いるもので、密輸は絶えない。
一目でわかる中毒者の風貌。

はじめは、清もイギリスも戦いは避けようとしていたらしい。
清の天朝意識がすごい。清は天朝であるから対等な国家はないという。
イギリスは貿易がしたいだけ。阿片は特に大口。

イギリスのヴィクトリア朝(突入したばかりだけれど)の繁栄は、こういう出来事もあったからこそなのか。
インドの支配もそうだよね。

連維材。店の金順記。解説を読んで架空の人物だと判明。
誰が主人公ということはないようだけれど、特別に挙げるとしたら、連維材のような気がする。
冷静な目で判断するというか見守る者として適切というか。先見の明もある。

西玲や黙琴・清琴といった女性たちも花を添えている。
西玲の弟の義譚は無茶しすぎ。実際身に返ってきているし。

政府の腐敗。報告は水増し等、都合のいいように改ざんするのが当たり前。
そんな中、林則徐は清廉で応援したくなる。
満州族と漢民族の分離政策。穆彰阿の工作に辟易。
道光帝は乾隆帝の孫。やる気のむらが激しい。
政府は、イギリスが北京に近づくと慌て、離れると再び強気になる。林則徐はそれに翻弄された。

日本人の石田時之助。日本人が登場することで、親しみがわくというか、関心が高まるものなんだな。
タグ:陳舜臣
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剣闘士スパルタクス / 佐藤 賢一 [国内作品]


剣闘士スパルタクス (中公文庫)

剣闘士スパルタクス (中公文庫)

  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 文庫


古代ローマ共和政末期の時代。
"スパルタクスの反乱"のスパルタクスのお話です。

スパルタクスが自ら反乱を起こしたというよりも、同僚たちにそそのかされて、持ち上げられて、頭にされた感じ。
剣闘士にも、トラキア系、ガリア系、ギリシア系とあって、それぞれの得物やそれに合った具足があるということで、へえそうなんだーと読んでいて面白かったです。
アクションも読み応えがありました。でも、後半より前半の方が良かったかな。

スパルタクスはトラキア人。
ギリシア人のオエノマウスのような、頭脳派が好きみたいです。先にいなくなってしまって残念。
ガリア人のクリクススはちょっとずるい気もするけど、そんな最期もありかな。

反乱軍、ついてくる人々の身勝手さ。藤本ひとみさんの『聖戦ヴァンデ』の民衆を思い出す。

アイドル的な存在の一流の剣闘士であったスパルタクスは、奴隷であった時の方が良い暮らしぶり。
ただ剣闘士であり続けたならば、殺人鬼であり続け、しかも同僚と戦わなければならない。それでも、剣闘士の学長という選択肢もいずれはあったのかな。

同じく西洋歴史小説を多く手がけている藤本ひとみさんの作品は宝塚的に小奇麗なのに対して、佐藤賢一さんの作品は下卑た感じなのが対照的な気がします。
タグ:佐藤賢一
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カエサルを撃て / 佐藤 賢一 [国内作品]


カエサルを撃て (中公文庫)

カエサルを撃て (中公文庫)

  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2004/05
  • メディア: 文庫


ガリア人からみたガリア戦記。

通称ヴェルチンは、<勇者の中の勇者にして偉大なる王>という名のヴェルチンジェトリクスとなった。
ローマ側からはウェルキンゲトリクスと呼び名が違うところも細かくていい。

禿を神経質に気にするカエサル。
ユリウス・カエサルを文字って、モエクス・カルウス(禿助平)と呼ぶほど文句を言うカエサルの部下たち。
でも、あるときを境に変わるカエサル。

部族間の統制をなんとかとろうとするヴェルチン。
まとまりが希薄な彼らならではのゲリラ作戦。焦土作戦。
ローマ人はやっぱり土木工事なんだなあ。
カエサルが勝つのも、必然ではなくて偶然という印象。どちらが勝ってもおかしくない。

カエサルの妻カルプルニアを奪うヴェルチン。
カエサルは妻をガリアへ連れて来ていたとは予想外。
カルプルニアを陵辱することで、ローマをカエサルを征服することを意図しているのか。
最後にはヴェルチンは自分の妻のエポナを認めているところが、ガリア人として誇り高く生きた象徴のように感じる。

エポナの名が馬の女神ということは、サトクリフの作品を読んでから頭に残りました。
ドルイドの役割とか、共通するものがあって読んでいてわくわくします。
タグ:佐藤賢一
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獅子王アレクサンドロス / 阿刀田 高 [国内作品]


獅子王アレクサンドロス

獅子王アレクサンドロス

  • 作者: 阿刀田 高
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/10
  • メディア: 単行本


赤石路代さんの漫画『アレクサンダー大王―天上の王国―』を読んで、もっと詳しく書いた歴史小説を読みたいと思っていたときに、この作品を発見したのでした。
阿刀田高さんの本は、『ギリシア神話を知っていますか』などの教養エッセイばかりだったので、小説を読むのは初めてです。

アレクサンドロスを書くとき、なぜアレクサンドロスは東へ進み続けたのかというのがテーマになるようだと他の記事で書いたけれど、この作品では、政治を究めるためといっているように思いました。

ゼウス・アモンという神の子だと母に言われ続けて育ったアレクサンドロス。
ミエザの学舎でのアレクサンドロスの「私は神の子か」に対するアリストテレスの次の言葉。
「善なるものを求め続けること、真なるものを探し続けること、神の子ならば、おのずと見えてくるものがある」
アリストテレスは哲学を究めて真実を探し求める。それに対し、アレクサンドロスは政治を究めて真実を探し求める、と思うようになったのではないかと。ただ、東征と政治がイコールで結ばれるのかと言うと、違うような気もしますけど・・。

糧秣の現地調達など、民が可哀相などと思ってしまいました。
歯向かう者は徹底的に打ちのめし、投降する者には寛大で軽い支配に留める。
測量をしながら、道路を作りながらというのは、ローマを思い出します。
海路の帰路をとるネアルコスの業績はすごいなと思いました。

為政はどうなっているのだろう。
マケドニアに残してきたアンティパトロスの手腕あってのもの。

アレクサンドロスにはついていけない。偉大な王なのか・・?
カリスマ性には目を見張るものがありますけど。
特にパルメニオン暗殺のあたりから、おかしくなってきている気がします。

東方ペルシアかぶれ。
現地の民を支配するには有効なことでも、元からのマケドニア人の部下としては、蔑ろにされている気分が否めない。
結果として、文化の融合からヘレニズムが生まれたのだろうけれど・・。
アレクサンドロスの目指すところと、部下たちが目指すところのずれがどんどん大きくなっていきます。

アレクサンドロスよりも、彼を陰で支えるアンティパトロス、パルメニオン、ネアルコスといった人たちに好感を持ちました。

少し前までは東征の途中で亡くなったものだと思っていたけど、引き返してきた上での死だったんですね。
後継者を争うディアドゴイが40年も続くとは。アレクサンドロス自身が生きた年数よりも長いという・・。
タグ:阿刀田高
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